投資なくして、会社の成長なし。
会社を成長させるには、継続的な投資が不可欠だ。
しかし、最適な投資タイミングや投資金額を計る指標や基準がない中で、闇雲に投資を進めると、投資の失敗リスクが高まる。
事実、投資のタイミングを誤ったり、過剰投資で会社が衰退するケースは後を絶たない。
この記事では、経営指標を活用して投資のタイミングと適正投資金額を計る方法について、詳しく解説する。
そもそも、会社の投資とは何か?
投資とは、会社の売上や利益を上げるため、或いは、会社の成長を加速するために先行して投じる費用のことだ。
投資のタイミングと金額を最適化するには、第一に、現状の投資経費の項目と共に、使われている投資金額を把握することが欠かせない。
会社の投資に該当する費用は、研究開発費や広告宣伝費だけに止まらず、意外と多岐に亘る。
費用科目 |
補足 |
---|---|
接待交際費 |
交際接待のほか、贈答品等も含まれる |
販売促進費 |
リベート、割引、試供品提供、等々、販売を促進する費用 |
広告宣伝費 |
チラシ代、ネット広告等、広告宣伝に関する費用 |
開発研究費 |
商品開発、試作開発、販売前テスト費用等、開発全般費用 |
一般試験費 |
既存商品の分析費用等、商品の付加価値データ分析等の費用 |
減価償却費 |
販売管理費内の減価償却費用(※1) |
リース費用 |
機械、設備用のリース費用 |
投資保守修繕費 |
システムの改修、増設費用(日常的な保守修繕費は対象外) |
投資消耗品費 |
商品付加価値を上げるための消耗品等 |
投資通信費 |
DM等の郵送費用 |
支払手数料 |
外部システムの利用料等 |
諸会費 |
各種団体の会費等 |
上表の通り、会社の投資は至る方面で費やされており、実際に自分の会社の投資経費を集計すると、投資費用の多さに驚かれる中小企業経営者もいると思う。
ちなみに、投資経費の中には惰性で投じている費用が必ずあるので、年に数回は棚卸(必要可否の選別)を行い、会社の成長にさほど貢献していない投資費用は削減を検討した方が良い。
※1 減価償却費とは、資産性の高い設備等(減価償却資産)を耐用年数に応じて費用化していく経費のこと
最適な投資タイミングと投資金額を計る経営指標は「売上総利益高投資経費率」になる。
売上総利益高投資経費率とは、売上総利益に占める投資経費の構成比率のことで、計算式は下記の通りになる。
投資経費率=(投資経費÷売上総利益)×100
中小企業の投資経費率の適正水準は下表の通りである。
売上総利益 |
100 |
100 |
100 |
---|---|---|---|
投資経費 |
15~20 |
10~15 |
10以下 |
営業利益 |
20 |
10 |
0 |
投資経費率 |
15~20% |
10~15% |
10%以下 |
投資経費率の適正水準は、営業利益率の水準、並びに、業種業態によって変化するが、概ね10%~20%の範囲が適正水準になる。
中小企業の投資経費率の適正判断は下記の通りである。
投資経費が範囲内に収まっていれば、投資タイミング、並びに、投資金額が最適化されていて、過剰投資の可能性は低いといえる。
投資経費が上限オーバーしている場合は、投資タイミングを誤っている、或いは、過剰投資の可能性が高いといえる。
なお、上記適正ラインは、主に、小売りや卸売り等の中間産業を想定しており、投資経費の集計も販売管理費内に限定している。
従って、製造業等、製造原価内に減価償却費等の大きな投資経費が含まれている会社の場合は適正水準が変わる。この場合は、売上比率で計算(投資経費÷売上高)し、毎月定点観測すると自社に適した適正ラインが見えてくる。
何れにせよ、投資のタイミングや投資金額を誤ると、会社経営の失敗リスクが高まる。
投資は勘と経験で行うのではなく、しっかりとした基準と指標を持ち、タイミングと金額を見極めることが大切だ。
投資には、機械設備の購入や建物の増改築等々、金額が大きいために費用化されず、資産計上(固定資産に計上)される大型投資がある。
この場合の適正な投資金額の算定や投資タイミングの判定は別のアプローチで考えなければならない。
なぜなら、大型投資を行うには多額の投資資金を必要とするからだ。
因みに、大型投資の資金調達は、減価償却費分の現金を貯蓄する方法が最も安全な正攻法になる。
減価償却費は現金流出の伴わない費用なので、費用として計上しても、現金が会社に残る。
例えば、2,000万円の投資計画に対して、減価償却費が毎期500万円ある場合は、4年で投資原資の貯蓄ができる。(4年も待てないのであれば、借入限度額の範囲内で金融機関等から資金を調達する方法もある)
投資の失敗による企業の衰退事例は数多にあります。失敗の原因は過剰投資に尽きます。ですから、全体のどの程度の経費が投資に使われているのかを常に把握し、その水準を適正にコントロールする意識を強く持つことが大切です。また、会社の強みと弱みを深く理解し、投資の優先順位を最適化することも重要です。
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