売上アップを実現する深掘り戦略は、中小企業の事業価値を高める効果的な経営戦略の一つといえる。
深掘り戦略とは、既存事業を徹底的に掘り下げて付加価値を再発掘(再発見・再定義)し、売上アップを実現する戦略展開のことだが、深掘り戦略が徹底されている中小企業は意外と少ない。
この記事では、中小企業に適した売上アップを実現する深堀り戦略について、詳しく解説する。
徹底した深堀り戦略は、売上アップに繋がるアイデアを沢山生み出し、なお且つ、低リスクで売上を上げやすい。
例えば、売上アップを狙って新規事業の開拓に軸足を置く中小企業経営者がいるが、この戦略は、既存事業の深堀りに比べて失敗リスクが極めて高い。
なぜなら、闇雲な新規事業の開拓は成功率が極めて低く、売上アップに繋がらないならまだしも、場合によっては、会社衰退のきっかけを作りかねないからだ。
深掘り戦略は、既存事業の付加価値(強み)を再発見する戦略展開なので、そうした失敗リスクがなく、新たな付加価値(強み)が発見できれば、効率よく売上を拡大することができる。
資本力に乏しい中小企業にとって、深掘り戦略は低リスクかつ効果的に売上をアップさせる優れた戦略といっても過言ではない。
中小企業に適した売上アップの深掘り戦略の基本ポイントについて、具体的に解説する。
繰り返すが、中小企業は、闇雲に新規事業を開拓しても売上はアップせず、むしろ、衰退リスクが高まる。
従って、新規事業よりも優先して、既存事業の深掘り戦略を展開することが、効率よく売上をアップさせる基本戦略になる。
下図は、売上アップの深堀り戦略の展開エリアを示したマトリックスである。
売上アップに最も適した深掘り戦略の展開エリアは「既存×既存エリア」になる。
既存×既存エリアは、専門性が非常に高い既存事業分野なので、売上をアップする上で最も失敗リスクが低い。
また、既存事業の分野は誰よりも経験豊富な領域なので、売上アップのアイデアが生まれやすく、なお且つ、効率的かつ効果的な売上アップの戦略展開がしやすい。
既存事業であっても、視点を変えて深掘りすると、売上拡大のヒントが無限に出てくるもので、アイデア次第では一段と市場が拡大したり、技術が向上したりもする。
既存事業の深掘り戦略は、中小企業の売上アップを支える優れた経営戦略だが、多くの中小企業は既存事業の深堀りに注意を払っていないので、深掘りの余地がないか一度点検することをお薦めする。
売上アップの深掘り戦略を成功させるには「経営課題を見落とさない」ことが大切だ。
なぜなら、既存事業を極めたつもりでも、経営課題を見落とした瞬間から事業価値が陳腐化するからだ。
事業価値の陳腐化とは、競合ライバルとの差が無くなるという事なので、既存事業の深掘りに終わりはなく、周囲の環境変化と共に絶えず表れる経営課題を捉え、対処し続ける事が不可欠になる。
☑お客様が求めるサービスは何か?
☑お客様が求めている商品を提供するにはどうすべきか?
☑お客様が喜ぶ独自商品やサービスを提供するためには何をすべきか?
このように、真摯な姿勢で経営課題を向き合うことが、売上アップの深掘り戦略を成功させる秘訣になる。
売上アップの深掘り戦略を失敗させないポイントは、テクノロジーや時流の変化を正しく捉え、経営をアップデートし続けることだ。
例えば、1970年代から2000年代の30年を切り取っても、様々なテクノロジーや時流の変化があった。
音源は、レコードからカセットへ、カセットからCDへ、CDからオンラインへ、
保存は、フロッピーディスクからハードディスクへ、ハードディスクからクラウドへ、
通信は、固定電話から携帯電話へ、携帯電話からスマートフォンへ、
販売は、対面形式からセルフサービス形式へ、セルフサービス形式からオンライン形式へ、、、
既存事業を極めても、新たなテクノロジーや時流に乗り遅れると、いとも簡単に事業価値が陳腐化し、売上が大きく減少する。
多くの中小企業はテクノロジーや時流の変化が訪れてから、ようやく対応を試みるが、それでは遅すぎる。
やはり、そのテクノロジー、或いは時流の変化が自社の事業構造にどのような影響を与えるのか、お客様の価値判断がどう変化するのか、など等、日頃から変化の影響を深く考えなければ、売上アップに繋がる優れた深掘りアイデアは出てこない。
経営者に強い信念と胆力がなければ、終わりのない深掘り戦略を推し進めることは出来ない。
今すぐにでも、既存の顧客と市場に目を向けて、売上アップの為の改善余地がないか深掘りしてみてほしい。
経営環境関係なく売上アップを実現している中小企業ほど、深掘り戦略を積極的に展開している。
(この記事は2016年7月に執筆・掲載しました)