
事業活動の結果は、すべて数字に現れる。
正直な数字は客観的事実として決断の根拠になり得るし、嘘の数字(粉飾等)は事業活動の嘘を見破る客観的証拠となる。
数字には感情も嘘もない。あるのは事実のみで、いつも会社の過去と現在を客観的に映し出す。言ってみれば、数字は、未来のリスクや可能性を示す有益な言語だ。
数字を活用すれば、社長業の中で最も難易度の高い決断という仕事はずいぶん楽になる。
まだ大丈夫、なんとかなるだろう、また次のチャンスが訪れるだろう等のあやふやな感情に流されることなく、事実に基づいた冷静な決断ができるようになるからだ。
社長の主観的な感情(願望、憶測、忖度等)に流された決断が増えると、会社の成長や繁栄は必ず停滞する。
停滞するだけならまだしも、数字を見ているようで見ていないと、場合によっては取り返しのつかない事態に陥ることもあり得る。
例えば、売上は見ているが利益を見ていない、利益は見ているが利益率は見ていない、売上と利益は見ているが現預金(キャッシュフロー)は見ていない等は良くあるパターンだ。
数字を見ているようで見ていないと、感情に流される決断が増え、徐々に衰退リスクが膨らみ、少しのきっかけで危機的な状況に陥る。
社会がどんなに複雑になろうが、周囲の環境がどれほど変化しようが、数字は確かな決断の拠り所になる。成長の壁にぶつかった時、あるいは、衰退の足音が聞こえた時ほど、感情ではなく、数字に基づいた決断が重要になる。

前章で解説した通り、数字は嘘をつかない。
しかし、数字を読む人間が、数字の意味を間違えることがある。
財務諸表を眺めて、その数字の良し悪しの判定に個人差が生まれるように、数字を読む力は決断の精度に大きな影響を及ぼす。
数字が示す事実、あるいは、数字の背景に対する理解が浅いと、数字の意味を間違えて、結局は感情(願望、憶測、忖度等)に流される事態に陥る。
数字が示す事実を冷静に受け止め、数字の背景にある状況を的確に捉え、成長の打ち手を論理的に組み立てることができて、初めて感情ではなく、数字に基づいた決断になる。
例えば、売上が落ちたのであれば、どの商品で、担当は誰で、どんな営業戦略だったのかを深掘りし、原因を考え、地に足のついた計画に練り直し、事業活動をアップデートし、数字(結果)を待ち、次の決断を下す。
売上が上がったのであれば、一過性なのか、そうではないのか、どの商品、担当、顧客、エリアなのか、ライバルとの差は何だったのかを深掘りし、原因を考え、今の計画をブラッシュアップし、数字(結果)を待ち、次の決断を下す。
数字に基づいた決断が定着するほど、社長の決断が感情に流されなくなり、決断の先送りや打ち手の失敗が少なくなる。当然、数字を読み間違えることなく、正しい決断を下せるようになる。
社長も人間なので感情に流されるのは自然のことだ。しかし、感情だけで会社を守れるほど会社経営は甘くない。
数字という武器を上手に活用することで、会社の衰退リスクは小さくなり、繁栄の可能性は大きくなる。それは結果として、社員、顧客、取引先等を守ることにも繋がる。数字を味方につけるか否かが、企業の盛衰を決定づけるのだ。
(この記事は2026年1月に執筆掲載しました)
ビジネスコンサルティング・ジャパン(株)代表取締役社長 伊藤敏克。業界最大手の一部上場企業に約10年間在籍後、中小企業の経営に参画。会社経営の傍ら、法律会計学校にて民法・会計・税法の専門知識を学び、2008年4月に会社を設立。一貫して中小・中堅企業の経営サポートに特化し、どんな経営環境であっても、より元気に、より逞しく、自立的に成長できる経営基盤の構築に全身全霊で取り組んでいる。経営者等への指導人数は延べ1万人以上。主な著書「小さな会社の安定経営の教科書」、「小さな会社のV字回復の教科書」