
コスト削減は企業にとって欠かせない重要な取り組みだ。
より良い商品やサービスをライバルよりも安い価格で提供するところに競争優位性が生まれるからだ。
会社の業績、あるいは、景気の良し悪しに関係なく、業務効率化や固定費圧縮等のコスト削減を進めることは、会社が生き残るための絶対条件と言える。
しかし、コスト削減を闇雲に推進することは危険だ。
未来の成長の種になる成長投資の削減は典型だが、コスト削減が仇となって衰退リスクが膨らむ企業は少なくない。
短期的な利益を出すためのコスト削減には、長期的な利益を損なうリスクがあることを常に認識しなければならない。
だから、コスト削減を推進し、長期・短期の利益を両方最大化するには、未来投資の削減を慎重に進める必要がある。
例えば、生産性改善、業務効率化、固定費圧縮、ムダムラ排除、最新設備やノウハウ導入等のコスト削減と並行し、人財育成、研究開発、ブランド強化等の未来投資の推進は欠かせない。
守りの経営と攻めの経営を同時に成立させる視点を持ち、上記のような取り組みを継続すると、コスト削減を起点に企業の付加価値が一段と高まり、短期的な利益も、中長期的な利益も良好に出るようになる。

未来投資を抑制する中小企業は多い。
しかし、未来への成長投資なくして、未来に残る会社は創れない。
未来への成長投資を渋ることは、会社の未来を閉ざすことになりかねない。
だからできる範囲から、最初は年間10万円からでも、徐々に50万円、100万円、1000万円と成長投資の金額を残しながら、コスト削減に取り組んでほしい。
なお、未来投資の領域は様々あるが、経営者が身銭で勉強し続けることは必須だ。
そのうえで、人財育成(社員有能化、採用力強化)、付加価値研鑽(強みを伸ばし、弱みを正す)、情報発信(集客力、ブランド力強化)は殆どの業種業態で不可欠といえる。
成長投資は、工夫次第で安価に運用することができる。
例えば、最新の技術やノウハウは商業化されれば安価に取り込めるので、そうした仕組みを活用し、成長投資のポートフォリオを最適化すれば、費用対効果が高まる。
また、成長投資の効果が少しでも花開けば、全体コストが下がる効果が期待できるので、細く長くでも継続することが肝要だ。
もちろん、無制限に成長投資を続ければよいわけではない。
重要なのは選択と集中だ。自社の強みと市場の変化を見極め、未来の利益に直結する領域に資源を振り向けることが重要で、そのために経営者自身が理想の未来を描き、必要な成長投資を取捨選択することが欠かせない。
コスト削減の効果は、より良い商品やサービスをライバルよりも安い価格で提供するだけに止まらない。
環境の変化に極めて強い経営基盤が整い、景気の良し悪しや業界の盛衰に翻弄されない強い会社に生まれ変わる効果も得られる。未来投資はリスクではなく、成功の必然といっても過言ではない。
(この記事は2026年1月に執筆掲載しました)
ビジネスコンサルティング・ジャパン(株)代表取締役社長 伊藤敏克。業界最大手の一部上場企業に約10年間在籍後、中小企業の経営に参画。会社経営の傍ら、法律会計学校にて民法・会計・税法の専門知識を学び、2008年4月に会社を設立。一貫して中小・中堅企業の経営サポートに特化し、どんな経営環境であっても、より元気に、より逞しく、自立的に成長できる経営基盤の構築に全身全霊で取り組んでいる。経営者等への指導人数は延べ1万人以上。主な著書「小さな会社の安定経営の教科書」、「小さな会社のV字回復の教科書」