
キャッシュは会社の血液だ。
人間の生命が血液によって生かされているように、会社はキャッシュによって生かされるからだ。
会社の血液とは、事業活動に不可欠なお金の量とお金の流れ(キャッシュフロー)を表す比喩表現だが、お金の量に余裕があり、お金の流れがスムーズであれば会社経営はうまくいく。
だから、人間の血液を健康に管理するのと同じように、キャッシュの量が正常か否か、キャッシュの流れに滞りはないか否かを日頃からチェックし、健康な状態を保つことは会社経営の肝と言える。
キャッシュの量と流れが健康であれば、たとえ、一時的に赤字経営に陥ったとしても、多額の借金があったとしても、会社経営は順調に推移する。
逆に、キャッシュの量と流れに異常があると、黒字経営や無借金経営であっても衰退リスクが膨らみ、場合によっては倒産することもあり得る。(黒字倒産は典型例)
キャッシュは会社の血液と言われる所以はココにあり、キャッシュの量と流れが企業の盛衰を決定付けるといっても過言ではない。

では、会社にとって十分な血液量、キャッシュの量はどれくらいなのか?
業種業態によって例外はあるが、一般的には月商の2倍が標準、3倍以上が健康といえる。
普通の会社は、月商の殆どがコストで、利益は10%以下の場合が多い。
この場合、月商と同額のキャッシュ量だと、入金と支払のタイミングによってはキャッシュが枯渇するリスク(入金が遅れると支払えないリスク)が高まる。
月商の2倍のキャッシュ量があると、キャッシュの枯渇リスクは無くなる。
しかし、未来投資(人財育成、設備投資、商品開発等)に使えるキャッシュに余裕がないので、やはり、健全な会社経営を確立するのであれば月商3倍以上のキャッシュ量がベスト水準になる。
会社の血液(キャッシュ)を増やすためには、利益を拡大すると同時に、キャッシュの流れをスムーズにする必要がある。
例えば、売掛回収を早める、資産効率を高める、過度在庫や不良在庫を持たない、コストを真剣に使いコスト以上の売上を獲得する、キャッシュフロー経営を実践する等の取り組みは効果的だ。
(この記事は2025年12月に執筆掲載しました)
ビジネスコンサルティング・ジャパン(株)代表取締役社長 伊藤敏克。業界最大手の一部上場企業に約10年間在籍後、中小企業の経営に参画。会社経営の傍ら、法律会計学校にて民法・会計・税法の専門知識を学び、2008年4月に会社を設立。一貫して中小・中堅企業の経営サポートに特化し、どんな経営環境であっても、より元気に、より逞しく、自立的に成長できる経営基盤の構築に全身全霊で取り組んでいる。経営者等への指導人数は延べ1万人以上。主な著書「小さな会社の安定経営の教科書」、「小さな会社のV字回復の教科書」