ホワイト職場とは、残業の強要がなく、十分な休日があり、難しい課題は与えられず、厳しい指導もない、いわゆる、居心地の良いゆるい職場のことである。
時に残業があり、難しい課題を与えられ、厳しい指導があれば、会社に行くことで強制的に仕事のスキルとマインドが磨かれるが、職場がホワイトすぎると、自身の知見や能力を磨く機会が極端に減る。
昨今は2019年に働き方改革関連法により労働時間の上限規制がされ、2020年にパワハラ防止法が施行されるなどした結果、誰もがゆるく感じるほどに職場環境がホワイトに改善されているが、向上心旺盛な新人からすると物足りなさを感じることもあるだろう。
事実、大手企業の入社3年未満の新人社員の2020年の離職率は3年前の20.5%から26.5%まで悪化(厚生労働省調査)しており、自分の成長環境がホワイトすぎることに危機感を持つ新人が一定数いることを示唆している。
以下は、ホワイト職場に関連した離職理由の一例である。
職場がキツイと辞める社員がいる一方で、ゆるいと辞める社員がいるのも事実で、同期や同級生と自身の成長を比較する機会が多い新人ほど、その傾向が顕著に出る。
また、新人ほどスポンジの如く新しいことを吸収するので、職場環境による成長の速度にも大きな差がつく。周囲と自分の成長速度の違いに不安を感じる新人が増えている背景には、こうした理由も考えられる。
職場がキツイと辞め、ゆるくても辞めるとなると、会社はどう社員を育てれば良いのか?
肝になるのは社員一人ひとりに合ったオーダーメイドの育成環境と社員の自主性を高める育成方針だ。
大前提として、会社が評価する人財像を明確に提示することが欠かせないが、そのうえで、社員が仕事を通じて何を求めているのかをヒアリングして、育成環境・育成ペースを決めることが大切だ。
人財育成の仕組みにAIやIT技術を導入している企業は数多にあるが、どの人事責任者も、最終的には一人ひとりの社員の要望に寄り添うことが大切だと言っている。
つまり、社員の才能開花を速め、離職を防ぐには、コミュニケーションを充実させて、オーダーメイドな人材育成を実現することが最も効率的ということだ。
もう一つの重要ポイントは社員の自主性を育てることだ。ソニー創業者の盛田昭夫氏は、新入社員に対して次のような言葉を贈っている。
「会社は学校ではないので教育する義務はない。一方、社員は、入社日から自分自身で考え、自らの責任で行動する義務がある。その自覚と努力が足りずに置き去りにされるのであれば、仕方のないことだ。」
この言葉が生まれた時代は、半世紀も昔だが、時代にマッチしない考えと一蹴することはできない。
事実、自主的に物事を考えることができない人は社会で活躍できないし、自分で考える自覚と努力なくして、自主性は身につかない。厳しさを求める新人に対しては、こうした自主性を鍛える課題を大いに与えると良いだろう。
何事もバランスが肝要だが、何れにせよ、時代の変化と共に創意工夫で育て方を最適化し続ける企業が有能な人財をたくさん輩出し、時代に対して大きな影響力を持つのだと思う。今、どういう人財を抱えているかよりも、今抱えている人財をどう育てるかの方が重要ということだ。
(この記事は2023年2月に執筆掲載しました)