会社の中に無責任な人間が一人でも存在すると、生産性が著しく低下する。
さらに、社長や上司など、上の階層の人間が無責任になるほど、企業全体が無責任体質になり、会社の衰退が加速する。
この記事では、無責任な人の特徴と心理、並びに、無責任な上司、社員、同僚、企業の対策について、詳しく解説する。
無責任な上司、社員、同僚、企業は、なぜ生まれるのか?
その答えは、無責任な人が無意識下で無責任な行動をとっているからに他ならない。
無責任な人は、基本、自分が無責任な行動をとっていることに気が付いていないし、自分の言動の矛盾やズレにまったく気が付いていない。
無責任な言動がもとで相手に迷惑や不快な思いをさせていることにも気が付いていないので、無責任な言動を自分自身で自覚・修正することもできない。
こうして無責任な人は世間に野放しになり、無責任な上司、社員、同僚となり、総じて、無責任な企業を生み出すに至るのだ。
わたしは経営コンサルタントとして様々な企業の経営者と交わり、社員に至っては数千名を超える数の個人面談をこなしてきた。
その中には、無責任な経営者が数多にいたし、無責任な経営者や上司、或いは、同僚に悩まされている社員も数多にいた。
例えば、業績責任を持たない経営者、失敗を部下のせいにする無責任な上司、周囲の足を引っ張る、或いは、周囲に迷惑をかける無責任な社員などは、決して珍しくない。
私自身も会社経営の現場で無責任な経営者や社員に悩まされた経験があり、なぜ、無責任な経営者や社員が生まれるのか、無責任な人の特徴と心理は一体どんなものなのかを、折にふれ、考えてきた。
次章で紹介する「無責任な人の特徴と心理の自己診断表」は、わたしの経験から無責任な人の特徴と心理をチェックボックス形式で紹介しているので、是非とも、参考にしてほしい。
以下は無責任な人の特徴と心理の自己診断表である。
当てはまる項目が多いほど、無責任な人(上司、社員、同僚)になっているということなので、客観的かつ冷静な眼で自己分析することをお薦めする。
なお、無責任な言動は無意識下で行われているので、自己分析する場合は、普段から自分の言動を客観視している他人と二人一組になって、お互いの無責任な特徴や心理をチェックし合う方法が望ましい。
☑ありがとうと素直に言えない
☑ごめんなさいを素直に言えない
☑現実(真実)を素直に受け入れない
☑自分の幸せは他人が叶えてくれるものだと思っている
☑自己保身の傾向が強く、責任が生じないような言動に徹している
☑弱者に強く、強者に弱い
☑プライドが高く見栄っ張り
☑いざというときに頼りにならない
☑約束を守らない(目標・指示・忠告に鈍感)
☑態度が無礼(他人の愛情、ご恩、手助けに鈍感)
☑見下されるのは大嫌いだが、他人を見下している
☑弁解や言い訳が多く、自分を正当化する傾向が強い
☑人を褒めるのが苦手だが、人のあら探しや批判はうまい
☑良い結果は自分のせい、悪い結果は他人のせいという思考が強い
☑愚痴や悪口が多く、泣き言が多いが、自分の立場が分かっていないので言動に矛盾が多く、さらに言動に一貫性がない
☑自善他悪(自分は悪くなく他が悪い)、自己独善(自分独りが正しい)自己中心(周囲の都合は関係なし)、という前提の言動が多い
無責任な上司、社員、同僚、企業が生まれる原因は、冒頭で説明した通り、無責任な人が無意識下で無責任な行動をとっているからに他ならない。
そうした無責任な人が社会に出れば、上司、社員、同僚という立場で企業の組織体に属すことになり、万が一、経営者までもが無責任な人になると、企業全体が無責任体質になってしまう。
当たり前だが、無責任体質が企業組織に根付いてしまうと、会社経営に様々な弊害を生み出す。
例えば、問題の先送り、ご都合主義、目標なき行き当たりバッタリの会社経営、イエスマン天国、モラルの欠如、下請や取引先イジメ、など等、企業の成長発展を阻害する深刻な弊害が山積する。
そして、企業の無責任体質を修正することなく突き進めば、企業は間違いなく衰退する。
無責任な人(上司、社員、同僚)は治るのか?
無責任な人を完全に治すのは難しいことだが、本人に無責任の自覚を促し、一定の責任感を持たせることは可能だ。
但し、会社組織の階層毎にその難易度は変わり、無責任体質の治しやすさを階層毎に順位付けすると、同僚→社員→上司という順番になる。
例えば、無責任な人が同僚だと、大概は、上下関係や利害関係がない間柄の他の同僚が様々な忠告をしてくれるので、当事者(同僚)が無責任体質を自覚し、修正することに困難が少ない。
無責任な人が社員だと、上司が忠告してくれることになるが、上下関係が仇となって、無用な反発心や抵抗心を招く恐れがあり、万が一、双方に素直さが欠けてしまうと、当事者(社員)が無責任体質を自覚・修正することが困難になってしまう。
無責任な人が上司だと、さらに難易度が上がり、企業のトップである経営者が忠告しない限り、当事者(上司)が無責任体質を自覚・修正することができず、治すのが一段と難しくなる。
このように、無責任な人は、会社の階層毎ごと治しやすさが変わり、無責任な上司に至っては、なかなか治せないというのが実態である。
無責任な人(上司、社員、同僚)に責任感を与える方法はいくつかあるが、最も効果的な方法をふたつ紹介する。
ひとつは、経営者の気遣い、もう一つは、感情の表面化、である。何れの方法も簡単に実施することができるので継続性を持ってトライしてみてほしい。
中小企業において、会社の中の無責任な人(上司・社員)に責任感を与える役割りは、経営者をおいて他にいない。従って、経営者自身が、無責任な人を決して放置しないことが大切だ。無責任な人(上司・部下)を見つけた場合は、褒めて自信を高める、注意が見下すことにならないことを諭す、ありがとうや大丈夫などの声掛けを積極的にする、など等、細く長く、無責任な人に対する気遣い(フォロー)をし続けることが、無責任な上司や社員の責任感を高める秘訣になる。
感情の表面化とは、御礼(ありがとう)と謝罪(ごめんなさい)の訓練のことである。全社員参加で、御礼と謝罪の発表を日課にすると、素直な心が育まれ、社員の責任感が自ずと高まる。感謝の気持ちを明文化するサンクスカードは大企業の職場でも導入されている手法で有名だが、サンクスだけでなく、ソーリーの気持ちも取り入れることが大切なポイントだ。