後継者育成が不十分な状態で、後継者に事業を承継すると、比較的短期間で業績が悪化し、会社が衰退する。
後継者の経営能力不足に伴う事業衰退の法則は、過去の歴史を振り返っても分かる通り、大企業であろうと、中小企業であろうと、結果は同じである。
この記事では、中小企業の後継者育成の計画と仕組み作りのポイントについて、詳しく解説する。
繰り返すが、後継者の能力が不十分な状態で経営をバトンタッチすると、高確率で会社が衰退する。
つまり、後継者育成の計画と仕組み作りの精度が、会社の未来を決定づけるのだ。
後継者育成の計画は、現役社長が引退する10年前から始めるのがセオリーだ。
また、同族会社の中小企業の場合は、帝王学(後継者としての全人的教育)に基づいた後継者育成が成功の秘訣になる。
この場合は、経営者と番頭(経営者の右腕として会社を取り仕切る人財)の教育スキルが高いほど、後継者育成の成功率が上がる。つまり、経営者と番頭の力量で企業寿命が決まる。
同族企業ではない、或いは、帝王学を施せない場合は、後継者に大企業経験を十年程度積ませて、社会、経済、人脈、経営の仕組みを幅広く勉強させ、一定のビジネス感覚を養ったうえで、後継者育成の計画を立てるのが良いだろう。
後継者育成を成功に導くうえで、後継者が注意すべき点は、社長の座に就く前に勉強できることは全て勉強することだ。
社長の座に就くと経営の勉強に充てる時間が殆どなくなるので、いかにして社長就任前に幅広く経営の知識を身につけるかが、後継者育成成功のカギとなる。
例えば、先代の経営理論、会社の数字、商品特性、顧客特性、事業の強みと弱み、社員の性格や力量、現場の苦労や問題点などの知識は必須で、先代への感謝や尊敬の念を強く持つことも大切だ。
また、積極的に自分を変える作業を推進することも不可欠で、例えば、自分の考えを変えて先代の価値観に合わせる、自分の階層や業務分野を変えてヒューマンスキル(人間力)を高める、自分の責任範囲を変えてトップの責任感覚を身につける、といった変化を進んで求める作業は、後継者育成を成功に導く重要なポイントになる。
さらに、社長業に役立つ資格を取得することもお薦めする。例えば、民法全般、特にビジネスの権利義務の法律理論が身に付く「宅地建物取引主任者」と会計の基礎知識が身に付く「日商簿記二級」の資格取得は、中小企業の社長業に活かせるのでお薦めだ。
後継者育成を成功に導くうえで、後継者に事業を承継する現役経営者が注意すべき点は、後継者の経営能力を見極めることだ。
特に、同族経営の中小企業の場合は、後継者の経営能力如何で衰退する会社が数多にあるので、注意してほしい。
また、後継者育成は最低10年かかると思って、事前に育成計画を立てること、加えて、自身の経営能力がピークを維持している内に後継者育成の計画を始動することも大切だ。
当然ながら、社長自身が自分の経営能力の衰えに気が付いてから後継者育成を始めたのでは、時すでに遅しで、会社も落ち目になりやすくなるし、後継者育成も事業承継もうまくいくものではない。
さらに、後継者に事業を承継した後も、会長-社長という体制で後継者育成をする時間の確保も欠かせない。
後継者育成は最高経営責任者である次期社長を決める仕事ですから、経営者にとっては一世一代の大仕事です。後継者育成は一朝一夕では済みません。会社の業績も経営者としての力量も調子の良い時に始め、相当な育成期間を念頭に進める必要があります。また、後継者の側も、相当な覚悟を決めて臨む必要があります。