中小企業において、採用のタイミングはじつに難しい。
なぜなら、殆どの会社にとって、人件費は最大のコストであり、コントロールを誤ると会社経営が危うくなるからだ。
この記事では、採用のタイミング、並びに、人材の雇い方・外部委託の活用法・人件費の適正ラインに至るまで、詳しく解説する。
中小企業において、採用のタイミングを計る方法は二つある。
一つは退職から逆算して採用のタイミングを計る方法、もう一つは、売上成長や新規事業の進捗から逆算して採用のタイミングを計る方法である。
前者のタイミングは、採用することでの失敗リスクは殆どない。退職することが分かっているので、人件費のバランスが崩れることはない。従って、採用者の訓練期間を加味したタイミングが採用のベストタイミングになる。
一方、後者のタイミングは、採用することでの失敗リスクがある。なぜなら、売上成長や新規事業の進捗が想定以下に陥ると、人件費のバランスが悪化し経営を圧迫するからだ。この場合は、リスク分散を考えた採用の方法を用意する必要がある。
退職から逆算して採用のタイミングを計る方法に比べて、売上成長や新規事業の進捗から逆算して採用のタイミングを計る方法は失敗リスクが高い。
こういう場合は、外注スタッフや派遣スタッフを上手に活用し、売上成長や新規事業の確実性が高まった段階で、正社員化のタイミングを計るのが良い。
一度、社員を雇うと簡単には解雇できないので、如何にして失敗リスクを減らしながら人を雇うタイミングを見計らうかが大切なポイントになる。コスト吸収力の小さい中小企業は特にこの点を注意した方がよい。
また、社員を雇うことは、その人の人生を全て背負うことになるので、採用は覚悟のいる仕事だということを決して忘れてはならない。
人件費水準の適正ラインは業種業態によって変わる。
例えば、コールセンターのような労働集約型の会社は人件費水準の適正ラインが高くなり、逆に、製造業などの資本集約型の会社は低くなる。
人件費の水準が正しいのか否かに悩んでいる経営者はじつに多いが、基本的に、人件費を含めた総コストが売上総利益高(粗利)の八割以下に収まっていれば優良といえる。
人件費を含めた総コストが売上総利益高(粗利)の八割を超えている場合は、人件費過多、或いは、人件費以外のコストが過多状態に陥っている事になるので、コスト構造の改善をせずに人を雇うと、採用がきっかけで会社経営に失敗する可能性が高い。
採用で失敗すると、リストラや減給など、元からいる社員に犠牲を強いる事態を招きかねないので、人件費のコントロールは日頃から注意することをお薦めする。