家業とは、家族間で承継される生業、或いは、特定の一族で支配されている中小零細企業のことである。
中小零細企業の大半は家業的生業、或いは、家業的事業形態であり、個人事業主を含めると、日本国内の多くの事業体は家業的ビジネスといえる。
この記事では、家業を継ぐ後継者が知るべき家業のメリット(強み)とデメリット(弱み)について、詳しく解説する。
家業とは、家の生活を立てるための仕事(職業・事業)、或いは、その家が代々従事してきた仕事(職業・事業)のことである。
家業の成り立ちは古く、律令制の全盛期であった8~9世紀頃に出現した、礼家(礼制)、薬家(医薬)、法家(法制)などと呼ばれる特殊分野の学問や技術を生業にする家柄が原型と云われている。
また、芸術文化面における華道や茶道などの家元制度、或いは、世襲制で子孫が代々承継する歌舞伎役者や農業ビジネス(家畜・田畑仕事等)も家業の範疇に入る。
現代においては、家族間で承継される個人商店等の生業、或いは、特定の一族で支配されている中小零細企業や地盤を引き継ぐ政治家や士業(弁護士・税理士等)など等が家業の範疇に入り、日本国内の多くの事業体は家業的ビジネスといえる。
家業を営むメリットについて、詳しく解説する。
家業を営む最大メリットは、組織力、資産力、ピンチに強いの3つが挙げられる。それぞれの解説は以下の通りである。
家族間で承継される個人商店等の家業は、家族経営がベースになっているので、家業以外の企業組織に比べて組織の結束が強い。組織力は業績に比例するので、家長(社長)に従う姿勢や全員経営で事に当たる等々の強固な組織力は大きなメリットといえる。
特定の一族で支配されている中小零細企業等の家業は、オーナー一族で事業収益を独占できるので、収益力が高いほど、個人資産の形成スピードが加速し、莫大な資産を手にすることができる。(普通の会社は、事業収益を自由に処分することはできない)
家族経営がベースになっている家業の場合は、事業がピンチに陥り、収益が落ちたとしても、自分たちの報酬を削ってでも事業継続を優先するのでピンチに強い。リーマンショック(2008年)やコロナショック(2020年)等の経済危機においても、日本経済が壊滅的にならなかったのは、こうした家業的マインドに救われた一面があったと推測する。(普通の会社は社員に対する給与の未払いがあれば離職が加速し事業活動が破綻する)
家業を営むデメリットについて、詳しく解説する。
家業を営む最大デメリット(リスク・注意点)は、組織力の低下、客観性の欠如、事業承継の失敗の3つが挙げられる。それぞれの解説は以下の通りである。
家業は、原則、組織力が強いが、創業者から代が下り、家族の繋がりが希薄になるにつれて、或いは、家族の利害がズレるにつれて、加速度的に組織力が低下しやすいデメリットがある。お家騒動で衰退する家業(事業)などはその典型といえる。また、一族経営の場合は、身内に対する能力評価が甘くなり、それが原因で経営陣と社員の軋轢や対立を生み、組織力が低下することがある。
家族経営の家業は、経営判断の基準が主観に陥り易く、家業の長(社長・店主等)の視野が狭まるほど、客観性を失い、経営判断を誤る。客観性の低下から、既存のビジネスモデルに固執し過ぎて、時代の変化と共に衰退する家業(事業)などはその典型といえる。
家業は、家族間で事業承継されることが一般的だが、家業の規模が大きくなるにつれ、事業承継の成功率が低下する。わたしは、数多の事業再建に関わってきたが、再建案件の9割以上は事業承継の失敗が大きな原因だった。また、親子間の事業承継の場合は、子供の経営能力を見誤って事業承継に失敗するケースも多い。
家業を継ぐメリットについて、詳しく解説する。
家業を継ぐ最大メリットは、帝王学、事業承継、歴史の承継の3つが挙げられる。それぞれの解説は以下の通りである。
帝王学とは、幼少期から家業を継承するまでの特別教育のことだが、家業を継ぐ立場に生まれれば、幼少期から帝王学の恩恵が受けられる。社長業の在り方や経営センスが磨かれるので、自然と事業家としての成功確率が高まる。また、家業を介した人脈にも恵まれるので、家業とは別の分野での創業チャンスも広がり易い。
家業を継ぐメリットは、一から事業を立ち上げる手間暇がかからないことだ。創業するエネルギは並大抵ではなく、更に創業した事業を軌道に乗せる事ほど難易度の高いものはない。家業を事業承継できれば、事業ノウハウや事業資産のみならず、事業存続に欠かせない顧客も容易に引き継ぐことができる。
家業は古くなるほど信頼や安心という大きな無形資産を生み出す。例えば、創業1年目の会社の販売努力と、創業100年を超える会社の販売努力を比べた場合、創業1年目の会社よりも創業100年を超える会社の販売努力の方が圧倒的に小さく済む。会社が100年以上続いているという安心感は、無条件で顧客の購買心理(購買ハードル)を下げるからだ。
家業とは、家族間で承継される生業、或いは、特定の一族で支配されている中小零細企業のことである。
家業を営む最大メリットは、組織力、資産力、ピンチに強いの3つが挙げられる。安定経営が実現できれば強い組織力と資産力が得られ、業績悪化等のピンチの時は家業的マインドに助けられる利点がある。
一方、家業を営む最大デメリット(リスク・注意点)は、組織力の低下、客観性の欠如、事業承継の失敗の3つが挙げられる。家業の長である社長のリーダーとしての在り方・生き方があらぬ方向に行くと、家業を営むデメリットが噴出し、家業の衰退が加速する。
家業を継ぐ最大メリットは、帝王学、事業承継、歴史の承継の3つが挙げられる。何れも、一から創業せざる得ない起業家と比べると、圧倒的メリットといえる。家業を継ぐ後継者の自覚と覚悟が事業承継の成功を左右するので、早い時期に家業を継ぐことを意識することが大切になる。