社員一人当たりの付加価値とは、一人の社員が生み出す会社の付加価値のことだ。
社員一人当たりの付加価値は、会社の労働生産性を計るうえで欠かせない、超重要な経営指標のひとつである。
例えば、社員一人当たりの付加価値が高い会社は、社員一人当たりの収益性が優れているということなので、会社全体の生産性が非常に高いといえる。
この記事では、社員一人当たりの付加価値の計算方法と適正水準について、詳しく解説する。
社員一人当たりの付加価値は労働生産性を計る指標として活用できるが、単純に会社の付加価値を社員数で割るだけでは、正しい労働生産性は測定できない。
なぜなら、社員数に社員の総労働時間を加えなければ、労働生産性の良否を正しく判定することができないからだ。
正確な労働生産性を把握するためには、社員数に社員の総労働時間も加味した「社員一人一時間当たりの付加価値」を計算しなければならない。
社員一人一時間当たりの付加価値とは、文字通り、一人の社員が一時間働いて生み出す会社の付加価値のことである。
会社の付加価値は、手元に残る所得金額(総人件費と営業利益(※1))なので、社員一人一時間当たりの付加価値が分かると、会社の収益性のほか、労働生産性の良し悪しも判定することができる。
つまり、社員一人一時間当たりの付加価値の高い会社は収益性と労働生産性が優れていて、付加価値の低い会社は収益性と労働生産性が劣っている、ということが分かる。
※1 会社の法人所得は課税対象なので、本来、当期利益のことを指すが、付加価値の算定には会社の本業利益を示す営業利益を採用した方が実態が明確になるので、あえて営業利益としている
社員一人一時間当たりの付加価値の計算式は下記の通りである。
①付加価値=総人件費+営業利益
②一人一時間当たりの付加価値=付加価値(①)÷総労働時間
※総人件費を集計する際は、役員報酬、給与、賞与、雑給、福利厚生、法定福利費、支払報酬、支払手数料(謝礼等)、等々、あらゆるヒトへの支払が対象となります。
※総労働時間は役員、社員、全従業員の労働時間の合計です。
※付加価値に減価償却費を含める見解もありますが、減価償却費は分配可能な所得金額ではなく、再投資の原資です。従って、減価償却費を付加価値に算入することは適当ではありません。
例えば、会社の付加価値が1億円で社員の総労働時間が10,000時間の場合、社員一人一時間当たりの付加価値は「1億円÷10,000時間」=1万円となる。
会社の付加価値が5億円で社員の総労働時間が100,000時間の場合は、社員一人一時間当たりの付加価値が「5億円÷100,000時間」=5千円になる。
社員一人一時間当たりの付加価値の適正判定について、解説する。
社員一人一時間当たりの付加価値の適正判定は簡単で、「常に増加傾向」が、一人一時間当たりの付加価値の目指すべき目標であり、適正な状態である。
なお、一人一時間当たりの付加価値は、会社の付加価値を社員の総労働時間で割るので、会社の付加価値が競合他社よりも多くても、人員と残業が多く労働生産性が劣っている会社は、一人一時間当たりの付加価値の水準が低下する。
つまり、少ない人員と少ない労働時間の体制を確立したうえで、会社の付加価値を拡大しなければ、一人一時間当たりの付加価値は増加しない。
少数精鋭体制に向いている中小企業が「一人一時間当たりの付加価値」を最大化することを目標に掲げると、自然と、骨太で力強い経営体質の会社に改善される。
一般的には、一人一時間当たりの付加価値の金額が大きいほど、社員の給与水準と会社の利益水準が高くなる。
従って、一人一時間当たりの付加価値の拡大を目標に掲げて経営改善を推進すると、自ずと安定経営の基盤が整う。
また、一人一時間当たりの付加価値が拡大すれば、あらゆるヒト(関係者)へ支払う報酬金額も増加する。
報酬が増額すれば会社の信頼感や求心力は益々高まり、報酬以上の能力を発揮する社員や関係者も増え、会社成長の好循環が生まれやすくなる。
つまり、一人一時間当たりの付加価値は、会社の収益性と生産性が分かるだけでなく、会社の成長を後押しする有効な指標にもなり得るのだ。
なお、一人一時間当たりの付加価値は、人時生産性(にんじせいさんせい)を計る経営指標でもある。人時生産性とは、労働生産性を計る経営指標の一つになるが、一定労働時間当たりの獲得収益を計算することで求めることができる。
社員の労働生産性、或いは、社員の収益性を測定する指標として一人一時間当たりの付加価値は大変に有効です。労働の割に給与が上がらない、或いは、会社の利益が上がらない、といった症状が出ている会社は、この指標が悪化している可能性が高いですので、日頃からしっかりモニタリングしてください。
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