損益分岐点とは、損失が出るか利益が出るかの境目のことだ。つまり、損益分岐点は、会社の採算ラインを示す経営指標になる。
例えば、売上が損益分岐点を上回ると利益が生まれ、売上が損益分岐点を下回ると損失が生じて、倒産リスクが高まる。
この記事では、損益分岐点・損益分岐点売上高・損益分岐点比率の計算方法と適正水準(目安)について、詳しく解説する。
損益分岐点とは、損失が出るか利益が出るかの境目のことで、会社の採算ラインを示す経営指標である。
そして、損益分岐点売上高とは、会社の採算ラインを示す損益分岐点上の売上高のことである。
損益分岐点と損益分岐点売上高は同義語になるが、言い換えると「売上の必達目標」或いは「回収すべき最低コスト」ともいえる。
つまり、損益分岐点(損益分岐点売上高)が分かると、絶対達成すべき売上目標が明らかになる。
損益分岐点売上高は、損益分岐点売上高を上回れば黒字経営、損益分岐点売上高を下回れば赤字経営というように、比較的簡単に業績の良否判定ができるので、簿記や会計が苦手な中小企業経営者でも運用しやすい経営指標になる。
また、損益分岐点売上高に占める売上実績の構成比率を求めると、会社の安全性の評価も可能になる。
損益分岐点売上高の計算方法は下記の通りである。
① 固定費の集計
② 変動費の集計
③ 変動費率の算定=(変動費÷売上高)×100
④ 損益分岐点売上高=固定費÷(1-売上高変動費率)
例えば、売上1,000万円、固定費500万円、変動費400万円の損益構造の場合、損益分岐点売上高の計算は以下の通りになる。
変動費率=(400÷1,000)×100=40%(0.4)
損益分岐点売上高:500万円÷(1-0.4)=833.3万円
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損益分岐点比率とは、損益分岐点売上高に占める売上実績の構成比率のことである。
損益分岐点比率が100%であれば、売上実績が採算ライン上(損益分岐点上)にあることになる。
つまり、損益分岐点比率が100%を下回ると黒字経営(利益発生)、100%を上回ると赤字経営(損失発生)となる。
損益分岐点比率の計算式は下記の通りである。
損益分岐点比率=(損益分岐点売上高÷売上実績)×100
損益分岐点比率の計算例は下表の通りである。
損益分岐点売上高 |
売上実績 |
計算式 |
損益分岐点比率 |
---|---|---|---|
1,000万円 |
1,250万円 |
1,000÷1,250 |
80% |
1,000万円 |
1,000万円 |
1,000÷1,000 |
100% |
1,000万円 |
800万円 |
1,000÷800 |
125% |
中小企業の損益分岐点比率の適正水準(目安)は下記の通りである。
損益分岐点比率80%以下は安全水準である。景気動向等の外部要因に対しても比較的強い水準といえる。
損益分岐点比率80%~89%は標準水準である。但し、急激な景気悪化に左右される可能性がある。
損益分岐点比率91%~100%は要改善水準である。少しの売上減少で採算ラインを割り込む可能性が高い。なるべく早い段階で80%台に改善できるよう、売上増加対策、或いは、経費削減対策を講じる必要がある。
損益分岐点比率101%以上は危険水準である。損失が生じており、採算ライン以下の売上水準になっている。早急に抜本的経営改善を講じないと業績悪化が加速する。当然ながら、対策を先送りすると会社倒産のリスクは著しく上昇する。
損益分岐点を構成する固定費と変動費のバランスによって、会社のリスク構造が変わる。
例えば、固定費が大きく変動費が小さい固定費中心型の会社と、固定費が小さく変動費が大きい変動費中心型の会社では、リスク構造に大きな違いが生じる。夫々の特徴は下記の通りである。
固定費が大きく変動費が小さい「固定費中心型の会社」は、ハイリスク・ハイリターンの事業構造といえる。損益分岐点が高い位置にあるので、利益が出るのが遅いが、損益分岐点を超えると大きな利益が出る。
固定費中心型の会社は、黒字化するのが遅い、赤字リスクが高い、黒字後の利益増加率が高い、等々の特徴が挙げられる。経営リスクを引き下げるには、固定費削減を主体とした経営改善が有効になる。
固定費が小さく変動費が大きい「変動費中心型の会社」は、ローリスク・ローリターンの事業構造といえる。損益分岐点が低い位置にあるので、利益が出るのが早いが、損益分岐点を超えても大きな利益があまり出ない。
変動費中心型の会社は、黒字化するのが早い、赤字リスクが低い、黒字後の利益増加率が低い、等々の特徴が挙げられる。経営リスクを引き下げるには、変動費削減を主体とした経営改善が有効になる。
損益分岐点は全ての経営者が理解すべき重要指標です。損益分岐点が分かると経営者の判断基準が明快になり、赤字経営に転落するリスクが低下するからです。また、損益分岐点に時間軸を加えると、先行投資型のビジネスモデルの損益分岐点を緻密に分析することができます。起業前後問わず、様々な事業局面で活用してください。