後継者への事業継承のセオリー|後継社長と繁栄の基礎を築く


会社を存続させるうえで、


一番難しいのは後継者への事業承継だ。


後継者の能力如何で、会社の盛衰が決まるからだ。


事業承継は、衰える前にバトンタッチするのが基本セオリーになる。


経営者としての衰えを感じてから後継者にバトンタッチするようではダメだ。


気力・体力・余裕等が十分に残っている状態で後継者に社長業を譲り、自身はバックアップに徹するのがベストだ。


若くして起業に成功する例が数多にあることを考えると、経営者の条件に若さは関係ない。


大事なことは、社長業の経験を数多く積み重ねることだ。


できれば後継者が三十代、遅くとも四十代には社長業を譲ることをお薦めする。


早く譲れば、後継者の適性をしっかり判断することができる。もし、任せた子供に適性がないことが分かれば、会社を売却して、オーナー(配当収入)に徹するという奥の手を考えることもできる。


早目の事業承継が繁栄を引き寄せる


早目に事業承継に手を打ち、


早く社長業をバトンタッチすれば、社長も後継者も後々楽になるだけでなく、会社の未来を明るくする選択肢が確実に広がる。


また、多額の税負担が生じる株式譲渡に対しても、早目に手を打つことができる。


会社の未来を考えて、自分にとって苦しい決断を下すことも、社長の大切な務めだ。


特に事業承継は、社長自身が決断しない限り、絶対に前に進まない案件なので、逃げは禁物だ。攻めの決断を意識してほしい。


ちなみに、社長業を譲った後は、ゆっくりフェードアウトするのが良い。


事業承継の後に、間髪入れずに完全引退するのは時期尚早だ。


後継者の経営スキルが相応に育つまでは、会長や顧問などのポジションに就いて、会社経営をバックアップすることをお薦めする。


事業承継の注意点


事業承継の注意点は、双頭体制を避けることだ。


指示命令系統は後継社長に統一し、極力、社員や取引先等と直接やり取りすることを減らすことが望ましい。


例えば、原則、社長を介して伝える、社長の指示を仰ぐ、社長に意見を促す等、なるべく後継社長を矢面に立てて、社長業の経験を積ませることを優先してほしい。


血縁関係にある親子間の場合は、一番、難しい作業になるが、後継社長を矢面に立てるほど、より早く社長業が板につくし、社員や取引先等からの信頼も自然と分け与えることができる。


後継社長の経営スキルが、期待の半分程度まで育ったら徐々にフェードアウトしても大丈夫だが、それまでは次の時代を担う社員と後継者のモチベーションを上手にフォローし、成長を後押ししよう。


後継者育成は十年かかると言われているが、最低2~3年は、焦らず急がず、しっかり育てる意識が大切だ。


皆さまもどうか、ベストなタイミングで事業承継を進め、経営基盤をさらに盤石にして、次世代により良い未来を繋いで頂ければと思う。


もし、やり方に迷ったり、悩んだりすることがあれば、いつでもご相談に来てほしい。懇切丁寧にアドバイスすることをお約束する。


(この記事は2023年9月に執筆掲載しました)


筆者プロフィール

ビジネスコンサルティング・ジャパン(株)代表取締役社長 伊藤敏克。業界最大手の一部上場企業に約10年間在籍後、中小企業の経営に参画。会社経営の傍ら、法律会計学校にて民法・会計・税法の専門知識を学び、2008年4月に会社を設立。一貫して中小・中堅企業の経営サポートに特化し、どんな経営環境であっても、より元気に、より逞しく、自立的に成長できる経営基盤の構築に全身全霊で取り組んでいる。経営者等への指導人数は延べ1万人以上。主な著書「小さな会社の安定経営の教科書」、「小さな会社のV字回復の教科書」