会社の数字を分析する手法は、経営者とビジネスパーソンの必須スキルといって過言ではない。
なぜなら、会社の数字は事業活動(仕事)の結果であり、結果である会社の数字を無視した事業活動(仕事)に成功はあり得ないからだ。
正しい事業活動(仕事)を推進するには、会社の数字の分析スキルが不可欠であり、このスキルなくして、会社の成長も、経営者(ビジネスパーソン)としての成長もあり得ない。
この記事では、会社の数字を分析する手法について、詳しく解説する。
会社の数字を分析する手法は、大きく二つある。
ひとつは、財務分析、もう一つは、管理会計(計数管理)と云われる分析手法だ。
財務分析は、株式市場等への公表を前提とした透明性と公平性の高い数字の分析手法のことで、管理会計(計数管理)は、財務諸表等の経営データの数値を有益な情報に変換、管理、運用し、会社の経営力を高める数字の分析手法のことである。
中小・中堅企業経営者とビジネスパーソンが身につけるべき数字の分析手法は、会社の成長のために会社内部の数字を緻密に分析する手法である後者の管理会計(計数管理)である。参考まで、それぞれの分析手法の特徴を、詳しく解説する。
財務分析とは、外部公表を前提とした会社の数字の分析手法である。
財務分析は、どんな会社であっても、大よそ共通の公式や分析手法で会社の実態を外部に公表するために行う分析である。
財務分析の数字は、主に株式市場や投資家向けの判断情報になるので、極めて高い公平性と透明性が求められる。
例えば、財務分析には、ROA(総資本利益率)、ROE(自己資本利益率)、DEレシオ(負債資本倍率)、財務レバレッジ、インタレスト・カバレッジ、PBR(株価純資産倍率)、PER(株価収益率)、EPS(1株当たり利益)などの指標が使われる。
管理会計(計数管理)とは、内部分析に活用する会社の数字の分析手法である。
財務分析とは違い、いかに経営の実態を掴むか、或いは、経営に役立つ数字をいかに導き出すか、というポイントが分析の基本になる。
従って、業種業態によって計算手法が変わるし、その企業オリジナルの分析手法も沢山ある。
例えば、管理会計には、売上高成長率、営業利益率、自己資本比率、など等の経営指標が数多く活用されるが、会社を取り巻く事業環境によって、経営指標の選別、経営指標の適正水準、経営指標の活用方法、など等の方針や基準が微妙に変わる。
会社の数字の分析手法である管理会計(計数管理)の学術理論は、統計学の範疇に入る。
統計学とは、バラツキのあるデータの性質を調べたり、或いは、大きなデータから一部を抜き取って、その抜き取ったデータの性質を調べることで、元の大きなデータの性質を推測したりするための方法論を体系化したものである。
統計学には、大きく分けて2種類の統計体系があり、ひとつは、あるデータを集めて、表やグラフを作り、平均や傾向を見ることでデータの特徴を把握する「記述統計」、もうひとつは、母集団からサンプルを抜き取って、そのサンプルの特性から母集団の特性を推測し、それが正しいかどうかを検定する「推測統計」がある。
記述統計と推測統計は会社の数字を分析する管理会計に広く活用されており、例えば、記述統計は、売上、経費、利益等の業績推移の把握に活用され、推測統計は、業績予測や予算管理、ABC分析(パレート分析)や事業計画作成等に活用されている。
会社の数字を分析することで分かることは数知れない。
会社の数字を分析すると、会社の現状も分かるし、更なる成長のための経営課題も明らかになる。簡単かつ効果的な分析指標を3つ紹介するので、決算書を2期分用意して、自己診断してみてほしい。
売上高成長率とは、会社の売上がどの程度成長したかを示す経営指標のことである。売上高成長率を見れば、その会社の将来性が自ずと見えてくる。例えば、売上高成長率がプラス成長であれば会社の衰退リスクが低く、売上高成長率がマイナス成長であれば会社の衰退リスクが高い、ということが分かる。計算式と適正水準はこちら>>
売上総利益率は、別称「粗利率」とも云い、会社の利益指標として最も馴染みのある経営指標である。売上総利益率を見れば、その会社の収益性が自ずと見えてくる。例えば、売上総利益率が他社よりも高ければ収益性が高く、売上総利益率が他社よりも劣っていれば収益性が低い、ということが分かる。計算式と適正水準はこちら>>
売上総利益高営業利益率は、会社の本業の利益(儲け)の水準を示す経営指標である。売上総利益高営業利益率を見れば、その会社の競争力が自ずと見えてくる。例えば、売上総利益高営業利益率が他社よりも高ければ競争力が高く、売上総利益高営業利益率が他社よりも劣っていれば競争力が低い、ということが分かる。計算式と適正水準はこちら>>
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会社の数字を分析するうえで最も大切なことは継続性だ。
なぜなら、会社の数字の分析を断片的に行っても、経営課題の本質を明らかにすることができないからだ。
例えば、単月比較ばかりの数字分析では、数字が上がった下がったと一喜一憂するばかりで、なかなか、経営課題の本質にたどり着くことはできない。
せいぜい数字に振り回されて、行き当たりバッタリの会社経営に陥るのが関の山だ。
会社の数字を継続的かつ正確に分析するには、年計の数字をベースに分析するのが一番である。
年計の数字の推移は、決算数値の連続推移を表すので、季節変動や特需に伴う数字の増減がすべて解消され、分析結果のバラツキが一切なくなる。
従って、過去から現在に至る数字の傾向が手に取るように分かるようになり、将来予測の精度も格段に上がる。
数字が分かると決断の精度が高まります。決断の論理的根拠が増えるからです。経済の多様化は進む一方です。ですから、論理性に欠けた勘や経験に頼った決断だけで乗り切れるほど会社経営は簡単ではありません。これからの会社経営は、経営者(ビジネスパーソン)の数字力が明暗を分かちます。