
日本は1995年から生産年齢人口(15~65歳)が減少し続けている。
一方で、就業者数は減少せず、むしろ微増傾向にある。女性、高齢者、外国人等の就業率が上昇しているからだ。
この先もこの傾向は続くが、当然、働き手の多様性に合わせた働き方を提供できない会社は、人を集めることも、人を雇い続けることもできず、事業を継続することが大変難しくなる。
場合によっては、慢性的な人手不足に陥り、組織のパフォーマンスが低下し、浮上のきっかけがつかめないまま衰退することもあり得る。
組織のパフォーマンスをキープするには、多様な人財に合わせた受入れ環境の整備が必要なのだ。
働き手だけではなく、働き方の多様性も拡大している。
例えば、明治以降の日本は、勤労勤勉がひとつの取柄になっているが、
人並み以上の努力をいとわず、自らの才覚で勝負をかける人がいる一方で、身の丈にあった幸せで満足して生きる人がいる。
バブル崩壊後は後者のタイプが増加傾向にあり、実際、昇進・昇格を望まない社員は増え続けている。
ちなみに、ほどほどの労働意欲と満ち足りた暮らしぶりは、江戸時代では当たり前だった。
当時、職人の労働日数は年間80日程度で、週休2日どころか、週勤2日だった。役人ですら、月番制度で、一ヵ月働いたら、一ヵ月休むシフトがあった。
大きな財産を形成したであろう団塊世代が平均寿命に達する2030年以降は、大きな資産相続の波が訪れるので、ほどほどの仕事量で、のんびり気楽に生きる人々が増えるかも知れない。

時代の進化と共に、
働き方の多様化を追求することも大切だ。
今後、技術革新や社会インフラの進化と共に、リモートワークやデジタルツインの領域はどんどん広がる。
会社に行かずとも仕事ができる環境は飛躍的に充実し、遠隔操作の労働範囲も一層拡大するだろう。
企業繁栄の鍵を握る高スキル人財ほど、多様な働き方を求める傾向にあるが、その実現可否は、間違いなく働き手のパフォーマンスに直結する。
こうした多様な働き手や働き方に合わせた労働環境を整えるには、様々な工夫が必要だ。
時短やフレックスだけではなく、週勤2日、月番制度、リモート、掛け持ち等の働き方、あるいは、女性、高齢者、外国人等が活躍できる環境整備など、極めて大胆、かつ柔軟な労働環境の構築が欠かせない。
多様性を受け入れるキャパシティーの大きさは、
今後50年は続くとみられる人材不足を解決するだけでなく、組織全体のパフォーマンスを高める強力な武器になる。
皆さまも、どうか多様な人財を受け入れる環境を整えて、働き手と働き方の多様性を高めて頂ければと思う。
(この記事は2023年9月に執筆掲載しました)
ビジネスコンサルティング・ジャパン(株)代表取締役社長 伊藤敏克。業界最大手の一部上場企業に約10年間在籍後、中小企業の経営に参画。会社経営の傍ら、法律会計学校にて民法・会計・税法の専門知識を学び、2008年4月に会社を設立。一貫して中小・中堅企業の経営サポートに特化し、どんな経営環境であっても、より元気に、より逞しく、自立的に成長できる経営基盤の構築に全身全霊で取り組んでいる。経営者等への指導人数は延べ1万人以上。主な著書「小さな会社の安定経営の教科書」、「小さな会社のV字回復の教科書」