ビジネスは弱肉強食の世界だが、稀に、強いものが負け、弱いものが勝つことがある。
他者と比べて経歴で劣っていようが、経営資源にハンデがあろうが、苦境からのスタートを強いられようが、ビジネスで成功を収める人間は数多にいる。
この記事では、ビジネスで成功する12の考え方として成功者の思考・言動・捉え方について、詳しく解説する。
ビジネスの成功にはチャンスが欠かせないが、その源泉は出会いにある。
ビジネスで成功する社長は、どこかで飛躍のきっかけに出会っている。誰とも出会うことなく自分で自分に火をつけるタイプは稀で、その殆どが、良き上司や師匠との出会いなど、他人の影響で自分も燃えるタイプだ。
かくいう私も他人の影響を受けて燃えるタイプだが、大企業の社長も例外ではない。ユニクロの柳井さんはピーター・F・ドラッカー氏との出会い、ニトリの似鳥さんは経営コンサルタントの渥美俊一氏との出会いがきっかけで経営者人生が一変したと語っている。
他者よりもたくさんの良き師匠や良き知見と出会うことが、成功のチャンスを引き寄せる秘訣だ。出会いは平等に行き渡っているものだ。重要なのは、一期一会の心掛けで、日々の出会いから学びや成功のチャンスをつかみ取ることだ。
誰から教わるかで、ビジネスの成果は大きく変わる。
教わる内容の良し悪しが、そのまま成果を決定付けるからだ。誰を先生とするか、どの先生を尊敬するかで、ビジネスの成功が決まり、ひいては、社長人生の成功が決まるのだ。
世界で初めて経営コンサルタントになったピーター・F・ドラッカーは「成功したければ付き合う人間を変えろ」と言った。1年前と比べて全く成功に近づいていなければ、付き合う人間を変えない限り、成功にはたどり着かないことを示唆した言葉だが、まさに金言である。
ビジネスの現場において、先生はとても重要だ。先生を活用するほど成功の可能性は大きくなる。しかし、先生を選ぶときはくれぐれも慎重に進めることをお薦めする。決して、こちらのニーズを見失うことなく、先生の肩書や経歴に惑わされることなく、心眼を開いて選んでほしい。
そして、社員にとっての先生は社長である。社員は、社長の一挙手一投足を見て育つ。だからこそ、社長は自己研鑽するための勉強が不可欠になるし、そのための先生選びが重要になる。誰を先生に選ぶか、どの先生から学ぶかで、会社の成功、ひいては、社長の成功や社員の成功が決まるのだ。
ビジネスで成功するためには、無知の知の実践が欠かせない。
無知の知の実践とは、自分が知らないことを知っている、ということを自覚し、素直に教えを乞う姿勢を持つことだ。
論語にも「知るを知るとなし、知らざるを知らずとなす、これ知るなり」という似た言葉がある。無知の知と同様、無知であることを自覚することで、新たな学びを促進し、その結果無知を克服し成長する、という意味を持っている。
社長であっても驕ることなく素直な気持ちで無知の知を実践すると、物事を本質的に捉えることができるようになり、ブレない哲学や信念が身につく。また、ヒトの苦労やモノの価値も正確に理解できるようになるので、器量や度量も高まる。
さらに、手足を動かして無知の知を実践すると、審美眼や芸術性(職人技)も高まり、人間力が盤石になる。人間力が大きくなるほど、人間の器も大きくなるので、自然と、有能な人財が社長の周りにたくさん集まるようになる。まさに、無知の知の実践は、ビジネス成功の源泉だ。
本気になると、目の前の世界は大きく変わる。
絶体絶命のピンチであっても、本気で生きるだけで、活路が開けてピンチがチャンスに変わる。だから、今の結果や現実を変えて成功したければ、本気で生きれば良いだけだ。
じつに簡単な理だが、本気の度合いや必死さは人によって違う。当然、必死さが足りないと、現実世界は大きく変わらない。それでは、必死で世界を変えるには、どの程度の必死さが必要なのか、ということだが、答えは簡単だ。死ぬ気で頑張れば良いだけだ。
必死=“必ず死ぬ”だ。死んだつもりで、過去も未来も考えずに目の前の今この瞬間に全力を尽くせば、必ず目の前の世界が好転する。天台宗の尼僧だった瀬戸内寂聴さんの40代の頃の座右の銘は「激しく生きて、美しく死ぬ」だったそうだ。
出家したのは50代なので、女性が社会で活躍することが難しかった時代に、一日一生の姿勢で、目の前の日々を死ぬ気で生きていたことが伝わってくる。そして、どんな苦難に見舞われたとしても、凛とした姿勢で、目の前のことに全身全霊で取り組む美しさも感じる。ビジネスで成功したければ、本気で生きることだ。たったそれだけのことで人生は大きく変わる。
夢を宿し、腹を決めると、ビジネスの成功が近づく。
夢は自分で創り出すものだが、常に新しい夢を描き、絶えず夢を心に宿すことはすごく大切なことだ。ビジネスが成功するイメージ、やりたい仕事やなりたい自分など、とにかく夢を心に宿し、夢に向かって一歩ふみだす姿勢は現実世界を大きく変える。
夢を失うと不運の種が宿る。どんなに小さくても良いので夢を心に宿して行動することが開運の大原則だ。そして、その夢を実現するために「腹を決める」ことが、その後の結果を大きく左右する。
会社経営を長くやっていると腹を決めるシーンが度々訪れる。腹を決めれば、現実から逃げることなく、誠実に試練と向き合うことが出来るので、大概の困難は乗り越えることができる。
真剣度合いが増すほど、試練もより大きくなるが、腹を決めることで、その試練を楽しく乗り越えることもできる。大きな夢であっても簡単に実現できる。
油断、慢心、自惚れ、中途半端など、夢の実現を阻むマインドも無くなるので、一貫性のある芯の強い生き方が定着する。ビジネスの成功は腹決めで決まると言っても過言ではない。
成長を阻害する最大の天敵は愚痴である。
愚痴は成長を阻害する。愚痴っぽくなった瞬間に、被害者意識が芽生え、あの人が悪い、この社会が悪い、周囲の環境が悪いと、他者を加害者に仕立てて、他者に責任を押し付けがちになるからだ。
何をやっても責任逃れができるので、とても居心地が良いが、自分の非を認めないために、自分磨きがピタリと停滞する。また、当事者意識がなくなり、自らが状況を打開することを放棄する。さらには、大きな変化や危機が迫っても我がこととして動けなくなる。
愚痴っぽくなると少しも成長することはなく、むしろ、周囲から後れを取る一方になる。
大きな課題や苦境など、大きなピンチが目の前に迫ると、ついつい弱気になって、愚痴っぽくなるのが人間の性かと思うが、会社のトップに君臨する経営者だけは、愚痴とは無縁でいた方が良い。経営者自身と会社の両方の成長が止まるからだ。当然、ビジネスの成功も遠のく。
儒教の開祖孔子やギリシャの哲学者アリストテレスは、中庸を幸福な生き方の中核として考えていた。
事実、中庸が分かれば、相対的な生き方から絶対的な生き方に変わるので、どんな事象、どんな人も受け入れる、愛と優しさに満ち溢れた世界が広がる。
戦国武将の織田信長、豊臣秀吉、徳川家康はホトトギスの歌を、鳴かぬなら殺してしまえ、鳴かせてみせよう、鳴くまで待とうとそれぞれ謡ったが、何れも「ホトトギスは鳴くものだ」という固定概念(中庸ではなく相対的な価値観)が結論を導いている。
この歌を全く別次元の境地で謡ったのが、経営の神さまと云われた松下幸之助氏だ。松下氏は「鳴かぬならそれもまたよしホトトギス」と謡った。鳴かないホトトギスもホトトギスとして認めようという中庸さがにじみ出ている。
経営者に必要なマインドは、この中庸の価値観だ。ご承知の通り、松下幸之助さんは、世界的企業パナソニックを創りあげ、94歳で天寿を全うするまで事業家・随筆家・文化人として第一線で活躍した。
不健康も結構と言うほど沢山の病気を経験しながら長寿を全うし、数多くの失敗にめげることなく事業家として大成功を収めた。何事も一からやり尽くし、振り子の原理で大きく飛躍し、両極を知ることで中庸的な生き方を実践し、大成功を収めた典型といえる。
ビジネスの成功を支える健やかで強靭なマインドを保つには中庸が肝要だ。常にフラットな立ち位置で自分を律する。ニュートラルな思考で物事を観察する。悪平等に偏らず、公平な基準で物事を判断する。攻めと守りの行動量をバランスよく増やす。マイナスの事象からプラスを見出す、など。
マインドが中庸を保っていれば、決断の精度が高まり、事業活動の成果が大きくなる。また、経営姿勢や経営指針の迫力も増すので、新しい社員や新しいお客様を引き寄せる企業の魅力が一段と輝く。
ビジネスで成功するためには、センタリングの機会を意識的に作る必要がある。
人生は自己対峙の連続で形成される。誰も見ていないし、誰から何かを強要されるわけでもない。手を抜こうが、全力を尽くそうが、どこを合格基準に置くかは全て自分次第だ。
自分の力量を上げるには、自己採点の合格基準を高め、なお且つ、合格基準に少しでも近づく努力が必要だ。しかし、人間は楽な方に流される習性を持っているので、一定の合格基準をキープするのは意外と難しい。
しかも、社長業が長くなると、本気で怒ってくれる人が周りから居なくなるので、自分で自分を律することでしか、自分の誤りを正す手段が無くなる。現実的には、失敗して初めて誤りに気がつくパターンが殆どなので、そうならないためにも、センタリングの機会やツールを持つことが大切だ。
伴侶やパートナーの助言、お師匠や専門家の知恵、道徳やモラルなども有効だし、自分のあるべき姿を明確にイメージすることも効果的だ。トップランカーに近づくほど、自分の力量を一段と磨き上げるために、センタリングの機会を意識的に作っている。
また、センタリングが充実するほど、ハッと我に返る、あるいは、ハッと気付きを得る機会に恵まれますので、成功のチャンスが格段に増える。我以外皆我師という言葉があるように、センタリングの機会は日常に沢山ある。意識的にセンタリングしてみてほしい。きっと、ご自身の力量と魅力がどんどん開花するはずだ。
心にゆとりを持って、静かに坐ると、ビジネス成功の糸口が見つかることがよくある。
人間はせわしなく動いているが、心にゆとりを持って坐ると、それまで耳に入らなかったものが耳に入り、目に入ってこなかったものが目に入り、本当に大切なことに気がつかされるものだ。
日々、慌ただしく動いていると、つい目の前の景色や情報を見落としがちになる。例えば、自分の振る舞いの悪さや自社のサービスの落ち度など、他者(社員・お客様・取引先等)との信頼関係を築くうえで大切なものを見失うことは良くあることだ。
当然、こうした大切なものを見失うと、知らぬ間に他者との間にある信頼関係にヒビが入る。本当は自分がヒビを入れているにも関わらず、相手のせいにして、一向に改善しないと、何れ信頼関係は破綻する。
成功のヒントやチャンスは足元にある。自分にとって大切なものは目の前にある。自分の家族や友人、会社の社員やお客様は宝物そのもの。心にゆとりを持って坐ると、社員・お客様・取引先等の本音や真意が分かるものだ。自分の生き方を改めるきっかけも見つかる。
社長自らが現場に足を運び、社員の声に耳を傾け、目の前の景色を正確にキャッチアップすれば、今恵まれていることに気がつき、社員・お客様・取引先の要望に応えるためのプロセスが最適化される。意思決定のトップに立つ人間になるほど、たまには心にゆとりを持って静かに坐る機会を意識的に作ることをお薦めする。
ビジネスで成功する過程には苦悩や葛藤がつきものだ。
しかし、笑いとユーモアがあれば、どんな苦難も乗り越えられるものだ。
幼少期から壮年期にかけて、親の離婚、母との死別、自身の離婚など、たくさんの苦悩を経験した宇多田ヒカルさんは「ユーモアさえあれば、いつでも絶望の対極に居られる。」と言った。
平和と笑いを愛し、反戦を唱え続けた結果、米国から国外追放されたチャップリンは「人生をクローズアップで見ると、悲劇もあるかも知れない。でも、どんな悲劇もロングショットで見れば、必ず喜劇に変わる。」と言った。
宇多田ヒカルさんとチャップリンは、生きた時代も年齢も大きく違うが、他人よりもたくさんの苦悩や葛藤を経験した点においては、共通点が多い。それでも、二人とも共通して、「今の苦悩は将来笑える。」という認識にたどり着いている。
受け入れがたい体験は自分を本物にする要素でしかない。辛いこと、嫌なこと、厳しいことを乗り越えるから人間性が磨かれる。地獄も極楽も表裏一体。今の苦悩は将来笑えるじゃないか、いや笑い飛ばそう!!!そんな声が聞こえてくる...。
一代で一兆円企業を作った日本電産の永守重信さんは、ピンチに追い込まれるたびにニコッと笑い、大声で「大丈夫」と三回唱えて、大きな苦難を何度も乗り越えたそうだ。会社経営を長くやっていると悲劇や絶望に直面することもあるだろう。そんな時こそ、笑いやユーモアを意識することを切にお薦めする。
ビジネスで大きな成功を収めるには、土台作りが大切だ。
成果を出す土台作りで重要なポイントは「会社の収益性」と「組織の行動原理」だ。
私の場合は、平常時は粗利の10%、好調時は粗利の20%以上の営業利益を出すことを収益目標に掲げる。
利益は現金を生み、現金は成長投資を加速させる。まずは、この収益を実現するために、今何をすべきか、今何が出来ていないのかを真剣に考え、果敢に行動する。収益の土台が整ったら、組織の行動原理を定着させる。
成果を出す上で大切な行動原理は「義理を通し、モラルを守る」ことだ。具体的には、目先の利益を考えず、社員・顧客・取引先等に義理を通し、モラルを持った事業活動を意識することだ。
目先の利益を優先し、義理を欠いた行動をすると協力者が居なくなる。法律さえ守っていれば何をしても良いというモラルを欠いた行動をすると、周囲からバッシングを受け、事業拡大の推進力が失われる。収益をさらに拡大するには、義理とモラルが不可欠だ。
義理とモラルに重きを置いた会社経営を実践すると、新しい仕事や役割に恵まれ、繁栄をキープし易くなる。特に、社員や業界の鑑(かがみ)になり得る社長や経営幹部ほど意識することをお薦めする。
一隅(いちぐう)を照らす、これすなわち国宝なり。
この一文は、真言宗開祖の空海(くうかい)と並んで平安仏教の二大巨頭と云われた天台宗開祖の最澄(さいちょう)の言葉だ。
一人が輝けば、隣人も輝き、やがて、社会全体が輝く。ひとり一人の人間が背伸びすることなく身の回りの範囲でベストを尽くすことが自分の幸せ、強いては社会の幸せ(平和)に繋がり、そういう人間は国の宝であるといった意味だ。
一隅を照らす姿勢が自分や周囲の幸せに繋がる理は至極もっともであり、ストンと腑に落ちる言葉だが、言うは易く行うは難しで、この言葉の真意は厳しさに満ちている。他力本願ではなく、自力本願こそが自分を助ける唯一の道ということだからだ。
他人に頼ることなく自分のベストを尽くすことは、じつに難しいです。失敗すれば現実から逃げたくもなるし、しんどい状況に陥れば他人のせいにもしたくなる。ハードルが高くなれば挑戦する勇気が萎えるし、コントロールできない状況下に陥れば思考や行動が停滞しがちになる。
現実を受け入れる。他人のせいにしない。挑戦する勇気を持つ。コントロールできない状況下であっても、目の前の出来ることを一所懸命やる。一隅を照らす生き方は厳しさに満ち溢れているが、常に進化を遂げて、社会に大きく貢献しうる人物ほど一隅を照らす姿勢を貫いている。また、成功社長や偉大なリーダーほど、一隅を照らす生き方が得意だ。