
原点に帰れば、
すべての答えが見つかると、多くの先人達が言っている。
例えば、千利休の茶道精神の心得を記した利休百首の中に「稽古とは一より習い十を知り、十より返るもとのその一」という和歌がある。
稽古事は、一から順番に十まで習い、十に到達したら、最初の一に戻り、また順番に十まで習う、
その繰り返しが真意、真髄、真理にたどり着く確かな方法で、一から十まで習ったからこれでもうよいと思った瞬間に成長が止まる、という意味だ。
社長業の鉄則も同じだ。
目の前の課題を一から順番に片づける。
やるべきことを一から十まで繰り返しやり続ける。
もうこれでよいと思わず一から学び直し、さらに上を目指す、など。
日々、会社経営から何かを学び、その学びを実践に活かすことが、全ての成功の原点になる。
会社経営は、思うような結果が出ないことが殆どだ。
経営環境が目まぐるしく変わるので、過去に失敗したことが成功したり、過去に成功したことが失敗したりすることも頻繁に起こる。
だからこそ、基礎の反復練習を疎かにせず、ひたむきに学び、働くことが大切だ。

お金と時間に余裕が出てくると、学びと働きから遠のくことがあるが、その時は要注意だ。
衰退リスクが膨らまない内に、社長業の原点に立ち返って、情熱と真摯さを取り戻そう。そうすれば会社はいつまでも繁栄し続ける。
また、ピンチの時も、チャンスの時も、基本や初心等の原点に立ち返ることも大切だ。
経営の基本、創業時の初心、誰のためのビジネスだったのか、誰の幸せを叶えたかったのか、何にためにガムシャラに働いてきたのか等、
もとの原点に立ち返れば、ピンチの時は成功のヒントが見つかり、チャンスの時は失敗のリスクがゼロに近づく。
社長になったら、どこかの誰かが助けてくれる、という他人任せの考えは捨てた方が良い。
自分で自分を守るために、原点を忘れず、誰かのために、自分ができることを精一杯やることが大切だ。
そうした行動の積み重ねが、社員、お客様、関係者等との信頼を深め、ピンチに負けない、たくさんのチャンスをものにする経営基盤を作る。
皆さまもどうか、決断に迷った時、結果に恵まれない時、目の前の現実が壊れた時、何をすべきか自信を失った時は、原点に立ち帰って頂ければと思う。必要な答えがきっと見つかるはずだ。
(この記事は2023年9月に執筆掲載しました)
ビジネスコンサルティング・ジャパン(株)代表取締役社長 伊藤敏克。業界最大手の一部上場企業に約10年間在籍後、中小企業の経営に参画。会社経営の傍ら、法律会計学校にて民法・会計・税法の専門知識を学び、2008年4月に会社を設立。一貫して中小・中堅企業の経営サポートに特化し、どんな経営環境であっても、より元気に、より逞しく、自立的に成長できる経営基盤の構築に全身全霊で取り組んでいる。経営者等への指導人数は延べ1万人以上。主な著書「小さな会社の安定経営の教科書」、「小さな会社のV字回復の教科書」