赤字経営とは何か?|赤字経営のメリットと赤字脱却の方法を徹底解説

赤字経営とは何か?|赤字経営のメリットと赤字脱却の方法を徹底解説

 

赤字経営とは、収入(売上)よりも支出(コスト)が上回っているマイナス収支の経営状態のことで、経理上は、営業赤字、経常赤字、当期純損失などの表記で示される。

 

会社経営は、収入以下のコストで運営することで初めて成り立つので、赤字経営は衰退リスクが極めて高い経営状態といえる。

 

この記事では、赤字経営の概要とメリットや税金対策としての赤字経営、並びに、赤字経営から脱却するための立て直し方法に至るまで、詳しく解説する。

 

 

赤字経営とは何か?

 

赤字経営とは、収入よりも支出が上回っているマイナス収支の経営状態のことだ。

 

売上以上の経費を消費している状態なので、赤字経営を脱却しない限り、会社存続に不可欠な利益(現金)が手元に残ることはない。

 

つまり、赤字経営を容認し続けている限り、会社の成長発展はないといっても過言ではないのだ。

 

ちなみに、赤字経営の語源は、西洋の簿記でマイナス収支を赤インクで記した風習が由来になっていると云われており、西洋では赤字経営のことを「in the red」などと表現されている。

 

なお、赤字経営は、経理上、営業赤字経常赤字当期純損失などの表記で示され、それぞれの赤字に至る理由は下記の通りになる。

 

営業赤字

営業赤字とは、本業の営業利益(収支)がマイナスに陥っている経営状態のことである。衰退リスクが極めて高く、金融機関や取引先に対する信用力も著しく低下する。営業赤字を放置するほど、黒字化の道のりが険しくなる。

 

経常赤字

経常赤字とは、本業の事業活動に加えて、営業外収支もマイナスに陥っている経営状態のことである。営業利益が黒字(プラス)であっても、金利等の営業外費用の負担が大きいと、経常利益が赤字(マイナス)に陥ることがある。営業赤字同様、衰退リスクが高く、外部に対する信用力も低下する。

 

当期純損失

当期純損失とは、最終利益がマイナスに陥っている経営状態のことである。本業、並びに、経常的に発生しない特別損失が発生すると、営業利益と経常利益が黒字(プラス)であっても、最終利益が赤字(マイナス)に陥ることがある。中小企業においては、資産の評価損や売却損に伴い赤字になるケースが多い。

 

キャッシュフローの赤字

キャッシュフロの赤字とは、現金収支がマイナスに陥っている経営状態のことである。営業利益、経常利益、当期最終利益の全てが黒字であっても、返済負担が大きい場合は、キャッシュフローが赤字(マイナス)に陥ることがある。会社は現金が無くなった瞬間に経営が破綻するので、キャッシュフローの赤字は極めて深刻な状態といえる。黒字倒産等はキャッシュフローの赤字が主原因になる。

 

 

赤字経営の実態

 

国税庁の調べによると全法人に占める赤字経営の割合は過半数を大幅に上回る70%にも上る。

 

日本の国内法人の99.7%は中小企業なので、赤字経営の割合は中小企業の経営実態を表しており、多くの中小企業が赤字経営に苦しんでいることが分かる。

 

しかし、赤字経営の企業が日本国内に300万社(全法人430万社×70%)もあるにも関わらず、年間の倒産件数(清算・破産)は僅か2.5万社程度と、赤字企業全体の1%にも満たない。

 

つまり、99%の赤字企業は、赤字経営であっても会社が倒産することなく、うまく生きながらえているということだ。

 

 

赤字経営でも潰れない理由

 

赤字経営でも潰れない理由は難しくない。

 

会社は赤字経営で潰れることはなく、現金が無くなったときに潰れる。

 

つまり、売上よりも経費が多いマイナス収支の赤字経営を続けていても、会社の現金が無くならない限り、会社が潰れることはないのだ。

 

例えば、次のような状況であれば、赤字経営であっても会社の現金が減ることはない

 

1.赤字金額以上の減価償却費がある

 

2.赤字金額を銀行等からの借金で補填している

 

3.赤字金額を身銭で補填している

 

上記1の「赤字金額以上の減価償却費がある」は、深刻度が低く、かなり多くの赤字企業が該当している赤字経営の典型例だ。

 

上記2の「赤字金額を銀行等からの借入金で補填している」は、深刻度が高く、早期に赤字経営を脱却しないと、追加融資を停止された途端に会社経営が行き詰まる。

 

上記3の「赤字金額を身銭で補填している」は、深刻度が非常に高く、身銭が無くなった途端に会社経営が行き詰まる。

 

赤字企業の99%が潰れない理由は、殆どは上記3つの理由に該当しているが、上記2・3に該当している赤字企業は、早期に赤字経営を脱却しないと、経営破たんのリスクが高まる一方になるので、くれぐれも注意してほしい。

 

 

赤字経営のメリット・デメリット

 

赤字経営のメリットは、法人税(均等割りを除く)が課税されない、或いは、損失の繰り延べができる、といった税負担の軽減である。

 

一過性の要因で赤字経営に陥り、税金の負担軽減といったメリットを享受することは問題ないが、赤字経営が常態化すると、深刻なデメリットが生まれる。

 

例えば、赤字経営の常態化に伴う企業の衰退スピードの加速は、最たるデメリットになる。

 

赤字経営が常態化すると、成長投資の原資となる利益(現金)が一向に増えないので、企業衰退のスパイラルから脱却することができなくなる。

 

場合よっては、赤字経営脱却のきっかけがつかめないまま、会社が倒産してしまうこともあり得る。

 

万が一、会社が倒産すると、社員や取引先に不幸をまき散らすだけでなく、経営者も、経営者家族も一瞬で不幸のどん底に落ちる。

 

つまり、赤字経営のメリットは殆どなく、デメリットの方がはるかに大きいのだ。

 

 

赤字経営は税金対策として有効か?

 

赤字経営の結果、マイナスの利益で決算を確定すると、その事業年度の法人税(均等割りを除く)は、原則ゼロになる。

 

さらに、その赤字金額は翌年以降への繰り延べが認められており、翌年の利益(黒字決算)を相殺し、法人税を軽減する効果も持つ。

 

一見すると、税金対策のためにわざと赤字経営をキープすることが賢い会社経営に思うかも知れないが、前章で解説した通り、赤字経営には会社倒産のリスクを引き上げるデメリットがあるため、税金対策としては極めてリスキーな方法になる。

 

赤字経営を脱却し、然るべき利益を上げて、しっかり税金を納めて、内部留保(現預金)を増やすことが、成長発展を実現する安定経営の正攻法になる。

 

 

赤字経営から脱却するための立て直し方法

 

赤字経営から脱却するための立て直し方法は、強みがある会社と強みがない会社でアプローチが変わる。

 

例えば、強みがある会社は強みに経営資源を集中させて赤字経営から脱却する方法が正攻法になる。強みが全くない会社の場合は、弱みを一つずつ解消していき赤字経営から脱却する方法が正攻法になる。

 

参考まで、赤字脱却に役立つ当サイト内の記事を3つ紹介する。

 

 

 

 

赤字経営は放置するほど立て直すのが困難になるので、赤字経営に陥っている会社は上記ノウハウを参考にして、直ちに赤字脱却の経営改善を講じることをお薦めする。

 

 

赤字脱却を目指すうえで注意すべき点とは

 

赤字脱却の道筋と手段は、大変、繊細でシビアな世界だ。

 

ほんの些細な判断ミスが原因で、赤字経営の程度が更に悪化することが起こり得るので、少しでも不安がある経営者は専門家を頼ったほうが良い。

 

赤字経営の場合は、何とかやれている内がチャンスだ。(赤字金額以上の減価償却費がある内がチャンス)

 

なぜなら、何ともできなくなってから赤字脱却を目指しても、手の施しようがないことが往々にしてあるからだ。

 

例えば、赤字経営に悩んでいる相談者に対して、「来るのが一年遅かったですね」と、ひと言おいて、「1年前に相談に来て頂ければ高い確率で赤字脱却ができました。2年前に相談に来て頂ければ、今頃、赤字から脱却し、経営が安定していたと思います。」と、答えざる得ないパターンは非常に多い。

 

会社は、現金がなくなると倒産するので、最低、1年分の運転資金がなければ、救えるものも救えない。

 

このパターンのように、経営相談の時期が遅いために、赤字脱却の成功率が著しく低下するパターンは少なくない。

 

赤字脱却のために経営コンサル等の専門家を有効に活用するのであれば、会社の財務状況が資本欠損に陥った段階がデットラインなので、くれぐれも注意してほしい。

 

伊藤のワンポイント
 

経営とは、企業の永続性を確立する事であり、その実現こそが経営者の本来の仕事です。赤字経営から企業の永続性を確立することはできません。最低限、黒字経営をキープし、利益拡大と共に、顧客と社員の満足度を高める努力が不可欠です。赤字転落は経営の危険信号です。決して赤字経営を容認してはなりません。